現代版 「石鎚山〜剣山 単独無支援完全縦走記」 


(2015年) 平成27年10月14日〜10月26日(13日間)


プロローグ

四国山地、石鎚〜剣山 単独無支援縦走の概要

地図を見ると四国の中央部を東西に標高が高い部分の色分けされた山々が続いている。山脈の西側には西日本の最高峰「石鎚山」標高1,982m
があり、東側には四国第二の高峰「剣山」標高
1,954.7m がある。この四国の両雄は共に日本百名山にも選定されている様に日本を代表する山
でもある。


この二つの名山の間には古来、伊予国、土佐国、阿波国を分ける国境稜線(現在は県境尾根)が脈々と続いており、これらの山々から流れ出
した水が四国三郎「吉野川」となり二つの山系を東西に分かつ。


地質学的には三波川帯という最も古い地層が中央構造線の南側=外帯に沿って競り上がり、その上に火山活動等が付加して形成された石鎚山系
と、秩父帯という2〜3億年前の海底堆積層の隆起による剣山系は少しその形成に違いがある様に言われている。


細かい事は良くわからないが、成り立ちや山容に違いがあるにせよ同じレベルの標高を持った山々が吉野川を挟んで肩を並べる様に立ち並ぶ地
形は山に恵まれた四国ならではの景観を造りだしている。


カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図

上記のトラックログ図(赤線)は今回の石鎚〜剣山縦走のルート図です。
石鎚山から吉野川までには山名が付けられたピークが31座、その東吉野川から剣山までは14座あり、合計45座の山を13日間縦走する壮大な
山旅であった。



石鎚・剣山単独無支援縦走のきっかけ

(2015年)平成27年7月末で定年退職となり人生を振り返りながら余生を過ごす境遇となった
43年間のサラリーマン人生の締めくくりを四国のLNG導入事業に微力ながら関わる事が出来てそこそこの満足感もある。さて、50歳を過ぎ
てから趣味として15年にわたって続けてきた四国の山歩きに関しても65歳無職という体力も時間も残された今、四国に於いて標高第一の名峰
「石鎚山」と第二の名峰「剣山」の間を連続縦走してみたいと意識するのは自然の流れであった気がする。


直接の契機は2年前に大田尾越から土佐街道・笹ヶ峰まで歩いた時に見た、兵庫山の山頂に掛けられた高松一高山岳部OB・OG会の石鎚・剣山
縦走記念プレートだった。期間は1971.12.21―1972.1.5とあるから16日間かかった事になる。昭和46年と言うと私がまだ
大学生だった頃で交通は多少便利になったとは言え冬場でもあり各所で組織の支援を受けての縦走であったろう。

しかしながらこの会の縦走を含めて石鎚〜剣山をどんなルートをどう歩いたのかという記録はネットや本で調べた限り皆無だった。ここはひとつ
自分が直接歩いてこの道筋の記録を残したいと言う思いが強く芽生えた。



兵庫山の山頂に掛けられた高松一高山岳部OB・OG会の石鎚・剣山縦走記念プレート


人間全く不可能な事に対して計画を立てる事は出来ない。多少困難は予想されるが決して不可能では無い石鎚〜剣山縦走に関して計画を立てる
事は比較的容易だった。勿論この縦走計画は、自分がこれまで15年続けて来た山歩き経験・実績に基づいて実行は十分に勝算があると思われ
るものであった。つまり私のバリエーションルートの山歩きスタイル、ビバークの経験、気楽な性格などがここに活かされる事になる。


縦走ルートの選択

先ず、石鎚山系と剣山系の間を分断する吉野川を挟んでこの二つの山系をどう繋ぐかという問題を解決しなければならない。石鎚山系の末端を
黒滝山」、剣山系の先端を「三方山」と設定しこの間をどう繋ぐかが一番の課題だった。すなわち吉野川を泳いで渡る訳にも行かないの
でどこの橋を渡るかというチョイスでもあった。


一つは北の「大歩危橋」でこちらは黒滝山から吉野川へ下る尾根も単純で短い。大歩危橋を渡ると鶏足山を経由して三方山へのルートとなるが、
事前にそのルートを歩いて検証して見た。

二つ目は南側の土佐岩原へ出る「大岩橋」を渡るルートだ。ここは黒滝山から多少地形は複雑だが大久保・大砂子という集落へ下り橋を渡ると
土佐岩原から直接三方山へ取り付く事が可能だ。


悩ましい所だったが大歩危橋付近は交通量が多くあまり山系を繋ぐルートとしては気乗りがしなかった。一方土佐岩原は県境に近く石鎚・剣両
山系を繋ぐ静かなる中継場所としては申し分なかったのでこの土佐岩原ルートに決定した。



石鎚山系の東端「黒滝山」から土佐岩原へ下るルート図

カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図


土佐岩原から剣山系の西玄関、三方山へのルート

カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図


単独無支援縦走にこだわる縦走ルート三分割法

次の課題は12〜13日に渡る縦走の途中で食糧、水、着替えなどの補給の問題をどう解決するかと言う事だった。私は今まで山の会に属
さず気ままに山歩きを続けて来たからこの縦走も仲間からの支援を受けない事にこだわった。

じゃあどうするのよ?

泉保安夫さんが編集・出版したイメージをトレースする山歩き地図1「剣山・三嶺」地図1「石鎚山・東赤石山」には今回の石鎚・剣山縦走
ルートが網羅されている。これを眺めながら全体の行程を三分割する。つまり石鎚山系はあまりにも長いのでこれを2つに分け、それに比較
的短くて歩き易い剣山系を加えて三分割として中間点にベースキャンプ的な自己支援エイドステーションを設ける事とした。


第一ベースキャンプ

石鎚山系の中間点はアプローチの便が良い「大田尾越」付近の大北川源流地を第一ベースキャンプとしてここに食糧、着替えを入れた袋を
事前にデポし余った食糧、着替え、ゴミをこれに収納する。これは縦走終了後の袋回収の手間も考えての場所決定とした。


第二移動ベースキャンプ

次に石鎚山系と剣山系を繋ぐ吉野川沿いの「土佐岩原」へ食糧・着替え、入れ替え道具などを用意した車をデポする事にした。長い石鎚山
系の縦走を終えて移動ベースキャンプ=愛車ラッシュで温泉に入り、まともな食事をして気分一新次の剣山系へと進むのである。これなら
万が一不測の事態が起こった場合はここで縦走を切り上げる事も出来る。そしてとりも直さず、このデポ車が剣山縦走後の帰宅用交通手段
にもなるときたもんだ。

う〜〜ん  我ながらムーチョいいアイデアじゃおまへんか


  
   第一ベースキャンプ  大座礼山〜大田尾越間の大北川源流地の樹にデポした食糧、着替え 
   このデポしたザックに余った食糧、着替え、ゴミを入れて置き、縦走後に回収に来るって段取りね

   
第二ベースキャンプは土佐岩原駅付近 写真は近くの      この車の中に剣山系の縦走装備、食糧、着替えなどを置いている。
ハッピーラフト代表のマークさん (長い間駐車していたので心配してくれた)  剣山系縦走時はJR土佐岩原駅前に移動した
 


縦走ルートの「水場」事前チェック

今回の様な長期縦走の成否の重要なカギを握るのは「水の確保」である。私の様な中肉中背65歳の年寄りにとって長期縦走可能なザック重量
は経験的にぜいぜい12キロが限度だ。水1Lは確実に1kgあるので仮に1日の消費量が1.5Lとしても4日分で容器重量を除いても6L
=6kgとなる。これでザック重量の半分を水が占める事になりこんな山行は話にならない。四国山地の縦走は北アルプスなどと違って営業小
屋は当然有り得ず、土小屋と吉野川を除き水は現地の沢での補給に頼らざるを得ない。


特に石鎚山系の東部は実にアップダウンや藪が多く水の消費も随分多くなる事が予想されたし、水場に到着するのが日没後になる事も想定して
縦走地域に存在する14ヶ所の水場を事前チェックする作業を行った。もちろんこの水場情報も前述した泉保さんのイメージをトレースする山
地図を参考にさせて頂いた。



石鎚山系の縦走路水場


             
      シラサ避難小屋下側の水場                          瓶ヶ森の瓶壺  登山口より15分
      縦走時は晴天続きで水の採取は出来なかった               石鎚山系最高の水場

          
      笹ヶ峰・丸山荘 この右手と裏側に水場あり  水量豊か         銅山川源流の沢は水量豊か
      山頂から下りで25分かかるので山荘泊りの時に利用かな        一の谷越えから15分銅山川源流碑のある場所

         
      大座礼山の大北川源流(登山道沿い)                 野地峰の水場(登山道沿い) 縦走路から下り20分
       水量は豊か                                縦走時は晴天が続きほぼ利用不可だった

        
   白髪隧道トンネル西口の水場 縦走時も使用可だった           白髪隧道の東側の水場 ここは縦走時には使わず
   場所は玉取山と大森山間のコル部から鉄塔保線路を西に15分下る   こちらは同じコルから東側へ登山道を15分下る

        
      中川峠の水場  峠から南へ15分下る             三傍示山の南尾根基部、立川越の道路保全水抜き側溝
      縦走時はここに水はなく更に10分程沢を下った        ちょっとためらったが水は澄んで綺麗だったので緊急補水

       
     立川越から林道を25分下った白川谷川上流部の沢        野鹿池山登山口の水場  縦走路から15分下る
     縦走時は遠いので使わなかった                    縦走時は水が極端に減っていた


剣山系縦走路の水場

       
      京柱峠の水場  ここは縦走時も沢山水が出ていた       矢筈峠(アリラン峠)の水場  縦走時は水が涸れていた

          
      お亀避難小屋の水場  縦走時も十分利用出来た      白髪避難小屋(南へ15分下る) ここは縦走時には使わず

          
     高ノ瀬・伊勢の水場 縦走時は使わず                 次郎笈北側トラバース路の水場
     水場分岐から15分 水場への道は少しザレている         剣山に近く位置的に中途半端で余り使う事はなさそうだ

縦走直前の準備を行う

@    縦走直前にベースキャンプの設営(2か所)を行った。

大座礼山〜大田尾越え間の大北川源流付近に着替えと食糧をデポ

ここは7月12日に食糧をデポする場所を確認済み。縦走日程が確定しないまま取り敢えず9月27日に食糧・衣料を入れたザックを登山道か
ら30m斜面を這い上がり木の上にデポする。


A    縦走前日(10月13日)JR土佐岩原駅近くへ着替えと食糧、追加装備品を積んだ車をデポし、JRとバスで縦走前日新居浜の実家へ帰る。

B 地図の準備
 
   泉保さんのイメージをトレースする山歩き地図は現在本屋では手に入らない大切な物だけに痛める事は出来ない。そこで今回の縦走山域をB4カラー
   コピーし石鎚から剣山まで7枚を持って行く。
   カシミールソフトで国土地理院の地形図に東経・北緯10秒の線を引いた物を石鎚山系の東部三ッ森山から吉野川まで、剣山系西部は吉野川から
   三方山までを約30枚程カラー印刷して持って行く。 (剣山系分は土佐岩原の車に置く)

C 縦走山行予定表を作成して家族に渡す。(計画では12日間だった)何せ家族には無謀な行為としか思われていないのでその説得材料としてこれは
  重要な物だった。   しかし十分な説得力があったかどうかは良くわからない。

D 縦走装備を準備する


 

上記には身に着けている服や下着、靴下、靴、ストック等は含まない。
結局縦走時は12kg〜13kgを常時背負う事になった。


   
 石鎚山系で使ったオスプレーアトモス65 (左)            左3つはノースフェースの分別ポーチ
 剣山系で使ったオスプレー エクソス58 (右)            右はモンベルのゴミ専用外付けポーチ


   
地図は泉保安夫さんのイメージをトレースする山歩き地図を参照   ライト、GPS、地図、コンパスは必携品

   
テントはモンベルのドームシェルターII                靴は前半・石鎚山系ではモンベルのリール式登山靴
ポール、張り綱、ペグなどで総重量1.1kg程           (大登岐山で不調になる)
べースキャンプの袋は夜間の靴収納用               後半は予備で車に積んでいたマムート登山靴を使用

石鎚〜剣山縦走ルート

(石鎚山系  31山)

石鎚山〜岩黒山〜伊吹山〜子持ち権現山〜瓶ヶ森〜西黒森〜自念子ノ頭〜東黒森〜伊予富士〜寒風山〜笹ヶ峰〜チチ山〜冠山〜平家平〜
三ッ森山〜大座礼山〜東光森山〜野地峰〜黒岩山〜大登岐山〜兵庫山〜玉取山〜大森山〜佐々連尾山〜三つ足山〜カガマシ山〜橡尾山〜
笹ヶ峰〜三傍示山〜野鹿池山〜黒滝山


(剣山系 14山)

三方山〜弘瀬山〜小檜曽山〜土佐矢筈山〜綱附森〜地蔵ノ頭〜天狗塚〜西熊山〜三嶺〜東熊山(カヤハゲ)〜高ノ瀬〜丸石〜次郎笈〜剣山


第一セクション  石鎚山系西部編 (石鎚山〜大座礼山・大田尾越)   9月14日〜9月17日



カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図

1日目(10月14日) 石鎚山〜シラサ避難小屋 約 8時間行動

バスとJRで西条駅へ、その後バスで石鎚ロープウェイ駅へ
成就(09:10h)− 弥山(11:10h)−天狗岳(11:20h)−土小屋(13:30h)―岩黒山(14:55h)−県境尾根
〜よさこい峠〜伊吹山(16:40h)−シラサ避難小屋(17:15h)



2日目(10月15日) シラサ避難小屋〜寒風山 約11時間20分行動

シラサ避難小屋出発(05:50h)−子持ち権現山(07:45h)−瓶壺(09:00h)−瓶ヶ森・男山(10:10h)女山
(10:30h)−西黒森(12:00h)−自念子ノ頭(13:25h)−東黒森(14:10h)−伊予富士(14:55h)−
寒風山(17:15h)


3日目(10月16日)寒風山〜大座礼山 約12時間行動


寒風山(06:25h)−笹ヶ峰(07:55h)−チチ山(08:50h)−銅山川源流(10:35h)−冠山(12:10h)−
平家平(13:05h)−三ッ森山(15:20h)−大座礼山(18:30h)




第二セクション 石鎚山系東部編 大田尾越〜黒滝山〜吉野川(土佐岩原) 9月17日〜9月22日

 ( この山域が石鎚〜剣山縦走の核心部と言える 


カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図

4日目(10月17日)大座礼山〜野地峰 約10時間40分

大座礼山(06:20h)−大北川源流ベースキャンプ(07:25h)−大田尾越(10:00h)−東光森山(11:55h)−
野地峰(17:00h)



5日目(10月18日)野地峰〜玉取山手前でビバーク 約10時間30分行動

野地峰(07:00h)−黒岩山(08:00h)−大登岐山(12:55h)−兵庫山(14:40h)−渡り尾根ビバーク地(17:30h)


6日目(10月19日)玉取山手前ビバーク地〜カガマシ山手前ビバーク 約11時間30分行動

玉取山手前ビバーク地(05:50h)−玉取山(06:00h)−白髪隧道水場(07:50h)−大森山(11:20h)−
佐々礼尾山(12:15h)−中川峠(14:00h)−水場(約1時間) −三ッ足山(17:05h)−ビバーク地(17:40h)



7日目(10月20日) カガマシ山手前ビバーク地〜立川越の南東尾根でビバーク 約12時間行動

ビバーク地(05:30h)−カガマシ山(07:30h)−栃尾山(09:00h)−笹ヶ峰(12:40h)−三傍示山(14;00h)−
南尾根基部林道部=立川越(15:55h)ー南尾根基部林道近くの沢で給水―尾根に這い上がってビバーク(17:20h)



8日(10月21日)立川越の南東尾根ビバーク地〜吉野川手前尾根でビバーク 約13時間40分行動

ビバーク地(05:30h)−野鹿池山・西峰(09:50h)−水場(10:25h)―野鹿池山・東峰(11:10h)−
黒滝山(13:20h)−吉野川への尾根で日没、彷徨の末沢でビバーク(19:10h)


9日目(10月22日)吉野川手前の尾根ビバーク地〜土佐岩原 約3時間10分行動

ビバーク地(06:30h)−土佐岩原・可動ベースキャンプ(09:40h)
温泉に入った後車中泊




第三セクション 剣山系  土佐岩原〜三方山〜剣山    9月23日〜9月26日


カシミールソフトを使ったGPSトラックログ図


10日目(10月23日)土佐岩原〜京柱峠 11時間30分行動

土佐岩原(06:20h)−三方山(12:55h)−弘瀬山(15:30h)−京柱峠(17:55h)

11日目(10月24日)立川越の南東尾根でビバーク 約12時間40分行動

京柱峠(0530h)−小檜曾山A(08:00h)―小檜曾山B(08:20h)−土佐矢筈山(09:15h)−笹峠(10:10h)
−綱附森(13:30h)−地蔵の頭(16:30h)−天狗塚(17:10h)−お亀避難小屋(18:10h)

12日目(10月25日)お亀避難小屋〜丸石避難小屋 約7時間40分行動)


お亀避難小屋(06:40h)−西熊山(07:15h)−三嶺(08:45h)−白髪避難小屋(10:45h)−高ノ瀬(13:15h)
−14:20h(丸石避難小屋)


13日目(10月26日)丸石避難小屋〜剣山見の越 約5時間行動

丸石避難小屋(05:30h)−丸石(05:50h)−次郎笈(07:20h)−水場チェック(08:20h)−剣山(09:15h)
−下山(10:30h)


三好市バスにて見の越〜久保 (11:00〜11:50h)
四国交通バス 久保〜大歩危駅(12:24〜13:34h)
JRにて大歩危〜土佐岩原駅(14:19〜14:27h)

大歩危サンリバー温泉にてきれいさっぱりして新居浜へ帰る

縦走路を三地区に分た登山記

石鎚・剣山縦走 第一部 石鎚山系西部 石鎚山〜大座礼山〜大田尾越は  ここ 

石鎚・剣山縦走 第二部 石鎚山系東部 大田尾越〜黒滝山〜吉野川は   ここ 

石鎚・剣山縦走 第三部 剣山系    土佐岩原〜三方山〜剣山は    ここ 



     トップページに戻る